三浦綾子の代表作であり、文壇デビュー作となった小説『氷点』は、北海道旭川市を主要な舞台として描かれました。この物語は、人間が生まれながらに背負う「罪」や「許し」という深いテーマを、旭川の風景と重ね合わせることで、読者に強烈な印象を与えます。
ここでは、小説の重要なシーンが繰り広げられた場所を中心に、実際にドラマなどで使われたロケ地の情報もあわせてご紹介します。
▶ 旭川ゆかりのロケ地や文学作品の舞台に興味がある方へ
小説『氷点』の中心舞台:外国樹種見本林と三浦綾子記念文学館
『氷点』の世界に触れる上で、最も重要な舞台となるのが外国樹種見本林です。
物語を象徴する森「見本林」
見本林は、小説の中で主人公の辻口家の自宅が入り口に設定されており、この森が辻口家の人々にとって庭のような存在でした。正式名称を「外国樹種見本林」というこの森は、1898年(明治31年)に造られた国有林の人工林です。ここは、外国の樹種が日本の寒冷地で育つかどうかを観察するために作られたという歴史を持っています。
見本林は約15ヘクタールという広さがあり、数十種類の樹木が植栽された緑豊かな空間です。小鳥やエゾリスも生息しており、運が良ければその姿を見せてくれることもあるでしょう。小径には木のチップが敷かれているため、散策しやすい自然休養林として、どなたでも無料で楽しむことができます。
この林を通り抜けると堤防があり、越えた先にある美瑛川の畔は、まさに『氷点』の重要な舞台の一つとされています。物語の中では、幼い少女の死という悲劇的な出来事や、主人公・陽子が人生の苦悩に直面する場所として登場しました。
三浦綾子は、この場所を「不気味」な空間として描写する一方で、氷を溶かしたような清らかな美瑛川や、遥かに見える大雪山連峰の美しさも対比的に描いています。この対照的な描写は、人間の心の奥底にある温かさと残酷さ、つまり物語のテーマである「原罪」を象徴していると考えることもできそうです。
また、堤防沿いには桜が植えられており、5月初め頃には美しい桜並木を堪能できます。
三浦綾子記念文学館
見本林の入口すぐ右手には、三浦綾子記念文学館が静かに建っています。この文学館は、三浦綾子の文学を愛する全国のファンからの募金によって1998年6月に開館した珍しい民営の施設です。
館内では三浦綾子の生涯や作品を知る展示、取材ノート、視聴覚ブースなどが設けられています。文学館の理念の一つは、ここに文学館を建てようという構想が見本林の存在により実現したことにあります。
- 開館時間: 午前9時〜午後5時(午後4時30分までに入館が必要)
- 休館日: 毎週月曜日(祝日の場合は翌日休館)、年末年始(12/30〜1/4)とされています。ただし、6月1日~9月30日の期間は無休です。
- カフェ: 館内には休憩できる「氷点ラウンジ」があり、温かな季節(4月25日頃オープン、10月12日頃終了)には野外喫茶も利用できます。また、お隣には2020年4月以降、入館無料のブックカフェもオープンしており、飲み物やスイーツ、オムライスなどのランチも提供されているようです。
- ガイド: 見本林を含めた文学館の無料ガイドを「三浦文学案内人」に依頼することができ、文学館のホームページから予約が可能とされています。
『氷点』を視聴できるVODサービス一覧
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旭川市内に点在する『氷点』ゆかりの地
旭川市内には、小説の舞台となった場所や、三浦綾子夫妻にゆかりのある場所が点在しています。
辻口家・辻口病院のモデル
小説に登場する主人公・辻口家のモデルになったとされる素敵な洋館が旭川市内に現存しているようです。また、辻口啓造が院長を務める辻口病院のモデルは旭川赤十字病院とされています。
「氷点のまち」を歩く道
旭川駅東口から見本林まで続く約1.4キロメートルの道筋は、「氷点通り」という愛称で親しまれています。この道筋には、神楽と駅前を結ぶ「氷点橋」があり、橋からは大雪山系の山並みなど旭川の美しい景色を望むことができます。この一帯は「三浦綾子文学の道」として整備され、市民が守り育てる文学と森のスポットとして、旭川を象徴する憩いの場となっています。
この「氷点の道」は、見本林を発着点に、喫茶店「ちろる」や三浦夫妻の住居跡などを巡り、氷点橋を通って文学館に戻る全長約8キロの市街地コースとして、フットパスマップも作成されています。
旭川六条教会
三浦綾子と夫の三浦光世夫妻は、実際にこの旭川六条教会に足繁く通い、1959年5月にはここで結婚式を挙げています。小説『氷点』の中では、主人公の陽子が通った場所として、また父親が罪の意識に駆られ心迷うシーンにも登場します。三浦綾子さんが『塩狩峠』の題材を知るきっかけを作った方との出会いも、この教会の修養会があった常磐公園内の施設でした。
常磐公園
旭川市の中心部に位置する常磐公園も『氷点』や『積木の箱』などの三浦作品に登場しています。千鳥ヶ池を中心に広大な敷地を持つ市民公園であり、豊かな緑と彫刻作品が調和した空間です。この公園は、物語の中で、登場人物が抱える心の闇や孤独、そして再生への道を模索する舞台として使われています。
三浦綾子にとって、常磐公園のような叙情的な場所は、自身の信仰心を深くする内省の場であった可能性が考えられます。
『氷点』にちなんだスポット
- 珈琲亭 ちろる: 『氷点』の中に登場する喫茶店で、旭川で最も古い喫茶店の一つです。レトロでシックな雰囲気を今も残しています。
- OMO7 旭川: 小説で主人公が食事をするシーンに登場する「北海ホテル」の跡地に建っています。
- 登録銘菓「氷点」: 旭川の菓子店・壺屋が、小説『氷点』にちなんで作った登録銘菓です。北海道産バターを使ったミルク生地で白こし餡を包み、表面をメレンゲと松の実で装飾し、氷雪の厳しさと美しさを表現したと紹介されています。
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ドラマ作品における「ロケ地」の傾向
『氷点』は過去に何度もドラマ化されていますが、作品によってロケ地の選び方に違いが見られます。
旭川での撮影事例
2006年に石原さとみ主演でドラマ化された際には、小説の舞台である三浦綾子記念文学館や見本林でも撮影が行われました。この時期に撮影に訪れたキャスト陣は、見本林の階段などを実際に歩いたとされています。
旭川以外での撮影事例
一方、2001年に浅野ゆう子主演で制作されたドラマ「氷点 2001」は、撮影協力地に神奈川県や東京都が多く名を連ねています。
- 主なロケ地: 主要な舞台の一つである「津川総合病院」の撮影は、神奈川県横浜市の横浜南共済病院で行われていました。
- 風景のロケ地: 辻口陽子と辻口夏枝が歩いた坂道や、辻口陽子が自宅に帰るために走った場所などは、神奈川県鎌倉市の七里ガ浜周辺が使われた例があります。また、重要なシーンで使われた崖のロケ地として、神奈川県三浦市の黒崎の鼻が挙げられています。
原作の舞台は旭川ですが、映像化作品によっては、物語のテーマ性やシーンに合わせて、広範囲の場所がロケ地として選ばれる傾向にあるようです。
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まとめ
三浦綾子の『氷点』の舞台を巡る旅は、物語の背景にある旭川の自然と、作家自身の深い精神世界に触れる機会となるでしょう。
小説の主要舞台である外国樹種見本林は、緑豊かで散策しやすい場所である一方で、物語の陰影を象徴する重要な意味合いを持っています。旭川の街並みに点在する「氷点通り」やゆかりの場所をたどることは、三浦文学が問い続けた人間の本質について、静かに思いを巡らせるきっかけになるかもしれません。
美しい風景の中に隠された、作家が託した深いメッセージを感じながら、ゆっくりと旭川の街を散策してみてはいかがでしょうか。
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