映画『しあわせのパン』の舞台を深掘り。実在モデルのカフェと物語に込められた想い

映画『しあわせのパン』の舞台を深掘り。実在モデルのカフェと物語に込められた想い しあわせのパン

北海道・洞爺湖のほとりにある小さな町、月浦。美しい四季の移ろいとともに、パンを分け合う人々の心の交流を描いた映画『しあわせのパン』は、公開から時間が経った今もなお、多くの人の心を温め続けています。

映画を観て、「あんな素敵なカフェが本当にあるのだろうか」「あの場所に行ってみたい」と感じた方も多いのではないでしょうか。

この記事では、映画の舞台となったロケ地や、モデルとなった実在のカフェについての情報をまとめました。また、映画と小説版の違いや、物語に込められた深いメッセージについても考察していきます。

 

カフェ「マーニ」のモデルとなった実在のお店

映画の中で、原田知世さん演じるりえさんと、大泉洋さん演じる尚さんが営んでいた「カフェ・マーニ」。このロケ地として使用された建物は、洞爺湖を見下ろす丘の上に実在しています。

実際の店舗名は「ゴーシュ(Gosh)」といいます。

映画の世界観そのままに、緑豊かな自然の中にひっそりと佇むロッジ風の建物です。窓からは洞爺湖の神秘的な景色を眺めることができ、まるで物語の中に迷い込んだような感覚を味わえる場所として知られています。

ただし、映画の設定と実際のお店にはいくつか違いがあります。

まず、映画では「パンカフェ」として様々な種類の焼き立てパンや食事が提供されていましたが、実在する「ゴーシュ」は主に自家焙煎珈琲とケーキを楽しむカフェです。映画のようにたくさんのパンが並んでいるわけではないため、パンの購入を目的とする場合は注意が必要です。

また、映画では2階が宿泊施設(オーベルジュ)となっていましたが、現在のカフェ店舗部分には宿泊施設はありません。しかし、同じ敷地内に別棟の宿泊施設があり、一日一組限定で滞在することができるといわれています。

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訪問前に知っておきたい「ゴーシュ」のこだわりと注意点

「映画の世界に浸りたい」と訪れるファンも多い場所ですが、訪問する際にはお店のスタイルやルールを理解しておくことが大切です。

「ゴーシュ」は、静かな時間を過ごすことを何よりも大切にしているお店です。そのため、店内での写真撮影や、携帯電話・電子機器の使用は禁止されているという声が一般的です。また、12歳以下のお子様の入店も制限されているとされています。

これらは「観光地」としてではなく、あくまで一人ひとりが自分と向き合ったり、景色を眺めてゆっくりと思索にふけったりするための配慮といえるでしょう。

賑やかにおしゃべりをしたり、記念撮影をメインに楽しみたいという方には少しハードルが高く感じるかもしれません。しかし、都会の喧騒から離れ、珈琲の香りに包まれながら静寂を楽しみたい方にとっては、これ以上ない贅沢な空間となるはずです。

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映画に登場したパンやガラス作品に出会える周辺スポット

「ゴーシュ」ではパンの販売は行われていませんが、月浦エリアには映画ゆかりのスポットが他にも点在しています。

映画に登場するような素朴で味わい深いパンを求めている方は、「ラムヤート」というお店を訪ねてみるのがおすすめです。こちらは「とうや水の駅」の向かいにあり、石窯で焼く天然酵母のパンが人気を集めています。実はこの建物も、映画の中ではアトリエとして登場していました。

また、映画の中で印象的だった「地獄耳の陽子さん」が作るガラス作品。これらは実際に月浦にある「glass cafe gla_gla(グラスカフェ グラグラ)」という工房で作られたものです。繊細なガラスアートを鑑賞したり、購入したりすることができ、旅の思い出の品を探すのにぴったりです。

さらに、洞爺湖畔のオートキャンプ場には、映画の大ヒットを記念して設置された「しあわせの鐘」があります。自分や大切な人の幸せを願いながら鐘を鳴らすことができるスポットとして親しまれています。

「カンパニオ」の意味と物語の考察

『しあわせのパン』という作品がこれほどまでに愛される理由は、美しい風景だけでなく、そこに描かれる「人と人とのつながり」にあるでしょう。

映画の中で語られる「カンパニオ」という言葉。これはラテン語で「パンを分け合う人々」を語源とし、「仲間」や「家族」を意味するとされています。

映画には、心に傷や孤独を抱えた様々な客たちが訪れます。彼らは、りえさんと尚さんが用意した温かい料理とパンを「分け合う」ことで、少しずつ心を通わせていきます。一つのパンをちぎって分け合う行為が、言葉以上のコミュニケーションとなり、冷えていた心を温めていくのです。

また、主人公であるりえさんと尚さんの関係性にも、深い背景があります。

映画では多くは語られませんが、りえさんは過去の経験から自信を失い、心に欠落感を抱えていたことが示唆されています。そんな彼女を、尚さんは静かに、しかし根気強く見守り続けています。尚さんの愛情は、言葉で強く主張するものではなく、相手の笑顔を願う優しい眼差しや、日々の暮らしの中に溶け込んでいます。

この作品には、三島有紀子監督が書き下ろした小説版も存在します。小説版では、映画では描かれきれなかった尚さんの日記(モノローグ)や、お客様それぞれの視点からの心情が詳しく綴られています。

映画ではいつも穏やかに微笑んでいる尚さんですが、小説を読むと、彼自身の抱える想いや、りえさんへの秘めた愛情の深さに触れることができます。映画を観たあとに小説を読むことで、「あの時の表情にはこんな意味があったのか」と、物語がより立体的に感じられるでしょう。

まとめ

映画『しあわせのパン』の舞台である月浦は、物語の空気感をそのままに残す、静かで美しい場所です。

モデルとなったカフェ「ゴーシュ」は、映画そのままのパンカフェではありませんが、訪れる人に静寂と安らぎの時間を提供してくれます。そこには、「観光」というよりも、自分自身の心を取り戻すための時間が流れているのかもしれません。

また、パンを分け合う「カンパニオ」の精神は、私たちの日常にもささやかなヒントを与えてくれます。美味しいものを誰かと分け合う喜び、言葉にしなくても伝わる思いやり。そうした温かさに触れたくなったとき、この映画やロケ地は、優しく迎え入れてくれることでしょう。

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