ピアノ調律という繊細な世界を美しく描き、多くの人の心を動かした『羊と鋼の森』。物語に登場する「江藤楽器」や、そこで働く調律師たちに特定のモデルが実在するのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。著者の宮下奈都さんが作品を書き上げるまでの背景や、映画の舞台となった場所、そしてプロの技術者たちの姿から、その真相に迫ります。
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物語の着想を得た実在の言葉と調律師たち
『羊と鋼の森』に登場する「江藤楽器」という工房そのものが、特定のひとつの場所を完全にモデルにしているわけではありません。しかし、物語の核となるエピソードや調律師の人物像には、実在するプロフェッショナルたちの姿が色濃く反映されています。
著者の宮下奈都さんがこの物語を書き始めたきっかけは、ご自身が幼少期からお世話になっていた調律師の存在でした。その方が古いピアノを点検した際、「中にはまだ良い羊がいますから大丈夫です」と語った言葉が、執筆の大きなインスピレーションになったといわれています。
この「羊」とは、ピアノの弦を叩くハンマーに使われる羊毛フェルトを指しており、その言葉からピアノの内部に広がる豊かな森のイメージが膨らんでいったそうです。
また、具体的な取材先として、埼玉県入間市でチェンバロやピアノの製作・修理を手がける狩野真さんが、2015年に宮下さんから取材を受けていたことが知られています。さらに、宮下さんが家族で北海道の山奥に暮らしていた時期、地元の小中学校にやってきた調律師の作業を見学した経験も、主人公・外村の視点にリアリティを与えています。
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映画で描かれた江藤楽器店のロケ地
実写映画版において、外村が就職する「江藤楽器店」の外観として使用された建物は、北海道旭川市に実在します。それは旭川中心部にある、アンティークな雰囲気を漂わせる歴史的な建物です。橋本光二郎監督は、この建物が映画の世界観を形作る上で非常に重要だったと語っており、現在は空き家とされていますが、今もなお作品の面影を色濃く残しています。
映画の撮影は、旭川市とその近郊を中心に広く行われました。主人公が調律の世界へ足を踏み入れるきっかけとなった体育館は旭川市立春光台中学校で撮影され、旭川のシンボルである旭橋や、レトロな風情が魅力の近文駅なども重要なシーンに登場します。
こうした場所を訪れることで、ファンの方々は物語の空気感を肌で感じることができるでしょう。ただし、学校や住宅地といった場所も含まれるため、訪問の際は静かに見守るなどの配慮が大切です。
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ピアノ調律という仕事の魅力と奥深さ
作品を通じて描かれる調律師の仕事は、一見華やかではありませんが、非常に奥深い魅力に満ちています。現場の調律師たちの意見をまとめると、この職業は単に音の高さを合わせるだけでなく、楽器の持ち主が抱く想いや記憶に触れる側面があるという声が多く聞かれます。
技術的な面では、0.01ミリ単位の細かな調整を繰り返すような、非常に緻密な作業の連続です。これは精密機械のメンテナンスのように一分の隙も許されない一方で、最終的には演奏者の好みに寄り添うという、正解のない美しさを追求する工程でもあります。
調律師の世界には「技術を身につければすぐに一人前になれる」という近道はなく、地道な自己研鑽を何十年と積み重ねることで、ようやく自分なりの音を見つけられるという傾向があります。こうしたストイックな姿勢が作品の魅力を支えているといえるでしょう。
一方で、映画のような感動的な場面ばかりではなく、実際には地味な作業や、お客様との細かなやり取りを大切にする日常が仕事の大半を占めているという点には留意が必要です。
まとめ
『羊と鋼の森』に登場するピアノ工房は、ひとつの決まったモデルがあるわけではなく、著者の大切な思い出や多くの調律師への丁寧な取材が組み合わさって生まれた、理想の場所といえます。映画の舞台となった旭川の街並みには、物語の余韻を今も感じさせる光景が広がっています。
ふとした瞬間に森の匂いを感じるような、静かで力強い調律師たちの世界。物語に触れた後は、自宅にあるピアノや街で見かける楽器から、かつての羊たちが奏でる「森の音」に耳を澄ませてみるのも、日常を彩る素敵な過ごし方かもしれません。
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