2010年に公開された映画『海炭市叙景(かいたんしじょけい)』。函館出身の作家・佐藤泰志の遺作となった短編連作を原作とし、その重厚な人間ドラマと美しい映像美は今なお多くのファンに愛されています。
架空の都市「海炭市」という名前が付けられていますが、そのモデルが北海道函館市であることは広く知られています。しかし、この映画で描かれるのは、観光ガイドに載っているようなキラキラとした函館ではなく、そこで懸命に生きる人々の生活の匂いや、地方都市特有の寂寥感です。
ここでは、映画の世界観をより深く味わうために、実在するモデル地やロケ地、そして作品の背景にある舞台設定について考察します。
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架空の都市「海炭市」と函館のリアル
映画の舞台となっている「海炭市」は、原作者である佐藤泰志の故郷、北海道函館市がモデルとされています。原作執筆当時の1980年代後半からバブル崩壊後の空気が反映されており、造船所の縮小や人口減少など、地方都市が抱える痛みがリアルに描かれているのが特徴です。
この映画は、単なるご当地映画ではありません。企画段階から函館市民が主体となって製作委員会が立ち上がり、資金集めからエキストラ出演、炊き出しに至るまで、多くの市民が参加して作り上げられました。
スクリーンに映し出されるのは、観光地としての「ハコダテ」ではなく、地元の人々が肌で感じている「生活の場としての函館」です。そのリアリティこそが、架空の都市でありながら、どこか懐かしく切ない海炭市の空気感を生み出しているといえるでしょう。
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物語が交差する象徴「路面電車」
映画の中で、登場人物たちの人生がすれ違い、一瞬だけ交差する場所として効果的に使われているのが路面電車(市電)です。特に「十字街電停」付近は、主要なキャラクターたちが同じ車両に乗り合わせるシーンなどで登場します。
冬の夜、暖かな車内と外の寒さのコントラストは、それぞれの登場人物が抱える孤独と、ささやかな温もりを象徴しているようにも見えます。実際に函館市電に乗車し、車窓から街を眺めることで、映画の登場人物になったような気分を味わえるかもしれません。
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失われた風景「ゴライアスクレーン」
映画の中で、幼い兄妹の記憶の象徴として登場するのが、造船所の巨大な門型クレーン(ゴライアスクレーン)です。これは函館の造船業を支えてきた「函館どつく」に実在したものでした。
このクレーンは、映画撮影の直前である2009年に解体されています。映画の撮影は解体前に行われたため、かつて函館のランドマークとして親しまれたクレーンの最後の姿が、フィルムの中に永遠に刻まれることとなりました。現在はその姿を見ることはできませんが、跡地付近を訪れることで、変わりゆく街の歴史に思いを馳せることができるでしょう。
初日の出を目指した「函館山」
物語の終盤、兄妹が小銭をかき集めてロープウェイに乗り、初日の出を見に行くシーンは、映画の中でも特に印象的な場面の一つです。この舞台は、函館観光の定番スポットである函館山です。
夜景で有名な場所ですが、映画では華やかさよりも、寒風吹きすさぶ厳しい自然と、そこにある静かな希望が描かれています。なお、冬の函館山は非常に寒さが厳しいため、訪れる際は防寒対策をしっかり行うことをおすすめします。
生活の息遣いが残る「函館朝市」
立ち退きを迫られながらも、頑なにその場を動こうとしない「トキ婆さん」が、ござを敷いて漬物を売っていた場所は、函館駅前の「函館朝市」がロケ地とされています。
原作者の佐藤泰志の両親も、かつてこの市場で商売を営んでいたというエピソードがあります。現在の朝市は観光客向けのお店も多く賑やかですが、路地裏や昔ながらの対面販売の風景には、映画に通じる生活の匂いが残っていると感じる人もいるようです。
舞台裏を知る「函館市文学館」
ロケ地巡りとあわせて訪れたいのが「函館市文学館」です。こちらには佐藤泰志のコーナーがあり、彼が小説を執筆する際に作成した「海炭市」の自筆地図などが展示されていることがあります。
現実の函館の地図に、架空の地名や設定を書き込んだ資料からは、作者がどのように現実の街を物語へと再構築していったのか、その創作の過程を垣間見ることができます。
まとめ
映画『海炭市叙景』で描かれた風景は、有名な観光スポットであっても、どこか寂しく、けれど愛おしい「日常の顔」をしています。
ゴライアスクレーンのように失われてしまった風景もありますが、路面電車や坂道、冬の海の色など、映画の空気感は今も街のあちこちに残っています。映画のシーンを思い出しながら街を歩くことで、ガイドブックには載っていない、函館のもう一つの魅力に触れることができるでしょう。
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