2010年に公開された映画『海炭市叙景』。函館出身の作家・佐藤泰志の小説を原作とし、きらびやかな観光地としての函館ではなく、そこで懸命に生きる人々の息遣いや冬の厳しい寒さをリアルに描いた作品として知られています。
スクリーンに映し出された場所を訪れることは、単なる観光旅行とはひと味違う、街の深層に触れる体験となるでしょう。この記事では、物語の舞台となった「海炭市」の風景を巡るための情報をまとめました。
▶ 函館エリアのロケ地をもっと知りたい方へ
物語が交差する象徴的な場所
映画の中で、登場人物たちの人生がすれ違い、重なり合う重要なスポットから紹介します。
函館山ロープウェイと山頂からの景色
世界三大夜景とも称される函館山からの眺望ですが、映画では兄妹が初日の出を見ようとする切実なシーンの舞台となりました。一般的には「宝石箱をひっくり返したよう」と形容される夜景も、この作品を通して見ると、眼下に広がる街明かりの一つひとつに人々の生活や葛藤があることを感じさせるかもしれません。
ロープウェイの営業時間は季節によって異なり、通常は午前10時から夜22時(冬期は21時)頃まで運行されています。山頂は夏場でも風が冷たいことがあるため、羽織るものを用意しておくと安心です。
十字街電停と路面電車
主要キャラクターである隆三と春代、晴夫とアキラなどが乗車したり、すれ違ったりする場面で登場するのが「十字街」の電停付近です。レトロな車体が街を走る様子は函館のシンボルですが、映画においては、行き場のない思いを抱えた人々を運ぶ「人生の交差点」のような役割を果たしているようにも見えます。
坂道と港の風景
函館と言えば坂道ですが、この映画で印象的に使われているのは、観光客で賑わう元町エリアの華やかな坂とは少し趣が異なる場所とされています。
幸坂(さいわいざか)と外国人墓地周辺
映画の終盤、若い二人が歩く急な坂道は「幸坂」付近であると言われています。函館山の麓にある坂の中でも特に勾配がきつく、高い位置まで続いているのが特徴です。また、海を見下ろす一本道として、魚見坂から外国人墓地へ抜けるルートも撮影に使われました。夕日が沈む時間帯の景色は美しく、静寂に包まれたエリアですが、周辺は静かな住宅街や墓地であるため、散策の際はマナーを守ることが大切です。
ともえ大橋
ベイエリアに架かる「ともえ大橋」は、歩行者も通行できる高架橋です。ここからは函館山や港を一望でき、劇中の空気を肌で感じられるスポットとして知られています。海風が強く吹き付ける場所ですので、帽子などが飛ばされないよう注意が必要でしょう。
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失われた風景と街の記憶
映画『海炭市叙景』には、撮影後に姿を消してしまった風景も記録されています。
旧函館どつくのゴライアスクレーン
かつて函館の造船業を支え、街のランドマークとして親しまれていた巨大な「ゴライアスクレーン」。映画では兄妹の幼い頃の記憶や、港町の原風景として登場しますが、このクレーンは撮影直前の2009年頃に解体されました。現在はその姿を見ることはできませんが、跡地付近(弁天町・大町周辺)を訪れることで、かつてそこに存在した鉄の巨人の面影や、変化していく街の切なさを想像することができるかもしれません。
函館朝市
立ち退きを迫られながらも、頑なにその場を動こうとしない「トキ婆さん」が漬物を売っていた場所は、函館駅前の朝市です。現在も活気ある観光スポットとして人気ですが、地元の人々のための市場という側面と、観光地化された側面が混在しているという声も聞かれます。映画のシーンを思い浮かべながら歩くと、普段とは違った市場の表情が見えてくる可能性があります。
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佐藤泰志の世界に深く触れるために
ロケ地巡りとあわせて訪れたいのが、映画の誕生に深く関わった文化施設です。
シネマアイリス
五稜郭エリアにある市民映画館「シネマアイリス」は、『海炭市叙景』をはじめとする佐藤泰志原作映画の企画・製作において中心的な役割を果たしました。映画ファンにとっては聖地のような場所とも言われており、こぢんまりとした温かみのある空間で映画文化に浸ることができます。
函館市文学館
末広町にある文学館には、佐藤泰志の常設展示コーナーがあります。直筆原稿や、小説の構想を練る際に描かれた手書きの地図などが展示されており、作品が生み出された背景を知ることができるでしょう。市電「末広町」電停からすぐの場所にあり、レンガ造りの重厚な建物も魅力の一つです。
ロケ地巡りのポイントと注意点
移動手段について
主なロケ地は市電沿線に点在していますが、端から端まで移動すると距離があります。市電の1日乗車券などを活用しつつ、坂の上や海沿いの離れた場所へはタクシーやレンタカーの利用を検討しても良いでしょう。
服装と時期
映画では冬の厳しい寒さが印象的に描かれています。実際に冬に訪れる場合は、路面が凍結しやすいため、滑りにくい靴と十分な防寒対策が必須です。夏場であっても、海沿いは風が冷たく感じることがあります。
まとめ
『海炭市叙景』のロケ地を巡る旅は、有名な観光名所をスタンプラリーのように回る旅とは異なり、街の余白や静けさを味わう時間となるでしょう。
今はもうないクレーンの跡地や、生活感の漂う坂道に立ったとき、ふと映画の登場人物たちが隣にいるような感覚になるかもしれません。華やかな夜景の向こう側にある、函館という街の「素顔」に会いに行ってみてはいかがでしょうか。
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