堀井雄二氏がシナリオを手がけ、1980年代に多くのプレイヤーを熱中させたアドベンチャーゲーム『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』。この作品の魅力の一つは、東京湾の晴海埠頭で発見された死体から始まり、捜査の舞台が広大な北海道へと移っていくそのドラマチックな展開にあります。
特に、北海道の舞台となる場所の多くは実在する地名や観光スポットであり、当時としては画期的なことに、堀井氏と当時の編集者であった塩崎剛三氏(東府屋ファミ坊氏)らは実際に北海道でロケハン(ロケーションハンティング)を行いました。
この綿密な取材によって、釧路、網走、知床といった道東(北海道東部)を中心とする魅力的な風景がゲームに取り込まれ、このゲームをきっかけに北海道の地名を覚えたというファンも少なくありません。この記事では、伝説のミステリーの舞台となったロケ地を、ゲームの流れに沿ってご紹介します。
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事件の幕開け:東京から道東への捜査ルート
ゲームの捜査は、まず東京湾の晴海埠頭で身元不明の男の死体が発見されるところから始まります。やがて被害者が北海道釧路出身であると判明し、舞台は広大な北の大地へと移ります。
北海道で最初に降り立つのは、タンチョウヅルの生息地として知られるたんちょう釧路空港です。ここで、主人公であるボスは北海道警察の猿渡俊輔(シュン)と出会い、共に捜査を始めることになります。
その足で向かう釧路市内、特に釧路駅周辺は、捜査の通過点として、また後半での目撃情報を得る場所としても登場します。そして被害者の実家があったとされるのが釧路市内の緑ヶ丘(みどりがおか)です。
その後、第二の事件が起きるのが、釧網本線沿いにある北浜駅と、その浜辺です。北浜駅はオホーツク海に最も近い駅として知られており、冬には流氷が接岸する光景が有名です。駅は現在無人駅となっていますが、ゲーム内では駅員との会話で事件の情報を得ることになります。
物語の鍵を握るオホーツクエリアの舞台
物語の重要な拠点となるのが網走です。シュンが言うように、東京の人にとっては「刑務所」を連想しがちな場所かもしれませんが、実際に訪れるとその穏やかな街並みを感じられる場所です。
網走刑務所とニポポ人形
網走で特に外せないのが網走刑務所です。ゲーム中でも多くの観光客が訪れると語られており、実際に刑務所の正面にある「赤門」はゲーム画面と同じ姿をしているとされます。現在の刑務所は外塀の改修工事が行われている時期もあるようですので、最新情報をご確認ください。一般の観光客が立ち入ることができない刑務所の代わりに、車で少し離れた場所には博物館網走監獄という観光地もあります。
そして、事件の鍵を握るアイテムとして登場するのがニポポ人形です。これは、実際に網走刑務所で受刑者の方が作る工芸品で、堀井氏がロケハンの際にこれを見て「ゲームに使える」と思いついたとされています。現地ではお土産として巨大な飾り用や実用品も販売されていたようですが、現在では即売所での販売がないという情報もありますので、事前に確認することが推奨されます。
タイトル画面の背景:能取岬の灯台
また、ゲームのタイトル画面の背景には、網走にある能取岬(のとろみさき)の灯台が描かれている可能性が高いとされています。特にPC-8801版のタイトル画面は、灯台のデザインが能取岬のものと類似しているようです。能取岬は、オホーツク海で最も早く流氷が接岸する場所としても知られています。
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悲哀のドラマを彩る道東の湖と大自然
北海道の雄大な自然は、事件の背景に潜む悲哀のドラマを深く彩っています。
摩周湖と屈斜路湖
摩周湖は、主人公が中山めぐみ、野村まきこと出会う重要な場所です。湖の中央に浮かぶ島はカムイッシュの島と呼ばれ、その美しい湖面と相まって忠実にゲームに再現されています。
摩周湖からほど近い屈斜路湖は、第三の殺人事件の舞台となります。ここでは、茶色の丸い苔(マリゴケ)が湖畔に漂う光景が見られるとされ、堀井氏はこのマリゴケも「ゲームに使える」と感じたそうです。また、屈斜路湖の湖畔沿いには和琴温泉があり、ゲーム中の印象的なシーンの舞台となっています。この場所は「わこと」と読むのが正確とされています。
知床・トドワラの幻想的な風景
さらに捜査は、世界自然遺産である知床の観光拠点ウトロの街へと進みます。知床五湖では、5つの湖のうち、おそらく駐車場から最も近い一湖で新たな死体が発見されます。三湖以降はヒグマ対策のため立ち入りが制限されることがありますが、その壮大な自然は訪れる者を惹きつけます。
知床半島の近くにあるトドワラは、海水に侵食されたことで枯れたトドマツが立ち並ぶ、非日常的な光景が広がっています。その様子はまさに「木の墓場」という名がふさわしい場所です。
クライマックスへ:札幌、紋別、夕張の重要スポット
札幌すすきのと事件の核心
主人公がゲンさん(野村源次)を探すため何度か訪れるのが札幌すすきのです。ゲーム内には「炉端焼きコロポックリ」という架空の店が登場しますが、リメイク版の背景グラフィックでは、ニッカウヰスキーの看板がそびえるすすきの交差点の風景がよりリアルに描かれています。
紋別と夕張、そして札幌駅へ
事件の根本的な過去の出来事が起きた場所として重要なのが紋別です。ここでは、紋別の街が一望できる紋別公園に港湾殉職者慰霊碑があり、物語終盤で重要な意味を持つ献花のシーンの舞台となります。
また、物語の裏側で拉致事件が起きるのが夕張です。ゲームが発売された1987年当時からすでに石炭産業の衰退が反映された寂しい街並みとされており、夕張中央炭鉱の跡地も重要なスポットとして登場します。
そして、すべての事件が収束に向かう舞台となるのが札幌駅です。事件解決後、主人公が東京へ戻るために向かうのは新千歳空港であると推測され、シュンとの別れのシーンで物語は幕を閉じます。
この他、物語をミスリードさせる要素として函館にも立ち寄ることになりますが、ゲームの進行上は無駄足となるユニークな場所です。
『オホーツクに消ゆ』聖地巡礼の注意点と魅力
巡礼の魅力
このゲームの舞台となっている北海道、特に道東地域は、屈斜路湖や摩周湖、知床など、今もなお雄大で美しい自然景観がそのまま残されています。ゲームの制作陣が実際にロケハンに700キロ以上を移動したという逸話が示す通り、広範囲を巡ることで、ミステリードラマを追う刑事のような気分を味わえるかもしれません。また、リメイク版では捜査中に訪れた場所を地図と共に振り返る「捜査マップ」機能が追加され、実際の土地に関する旅行案内の情報が盛り込まれている傾向があり、巡礼をサポートする要素があるともいえるでしょう。
旅の注意点
一方で、聖地巡礼を行う際にはいくつかの注意点があります。道東エリアは特に移動距離が長くなるため、車での移動が中心となります。また、ゲームの発売から長い年月が経過しているため、当時の風景と現在の様子が異なっている場所も存在します。例えば、札幌すすきのの風景や、知床の売店などは、時代の変化とともに姿を変えている可能性があります。
また、ゲームの舞台設定自体が1980年代のリアリティに基づいており、現代のゲームと比較すると、システムの利便性が低いと感じる意見もあります。忠実なリメイクによって、謎解きの難易度がそのまま維持されている傾向が見られるため、純粋に推理部分を楽しみたい方は、多少の苦労を伴う可能性があるかもしれません。
これは、堀井氏が当時「言葉選びで迷うのではなく、謎について悩んでほしい」と考えていたことの現れともいえるでしょう。
まとめ
『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』は、約40年の時を超えてリメイクされるほど、その物語性やゲームとしての骨格がしっかりしていると評価される名作です。実際に舞台となった北海道の地を訪れれば、当時のプレイヤーたちがなぜあれほどまでにこのミステリーに引き込まれたのか、その理由を体感できるかもしれません。
カニが美味しいと語られたロケハンの思い出や、ニポポ人形に隠された悲しい真実。一つ一つの場所に、事件と過去のドラマが深く刻み込まれています。北海道の雄大な風景の中で、愛憎の果てに起きた連鎖殺人の足跡を辿る旅は、きっと記憶に残るものになるはずです。
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