『羆嵐(ひぐまあらし)』のモデルとなった事件と舞台を考察|虚構と真実の境界線

『羆嵐(ひぐまあらし)』のモデルとなった事件と舞台を考察|虚構と真実の境界線 ドラマロケ地

吉村昭氏による傑作小説『羆嵐(ひぐまあらし)』。大正時代の北海道を舞台に、圧倒的な力を持つ巨大ヒグマと開拓民たちの壮絶な戦いを描いたこの作品は、読む人に強烈な恐怖と衝撃を与え続けています。

「これほど恐ろしい話が本当にあったのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。実はこの物語には、日本獣害史上最悪とされる実在の事件がモデルとして存在します。

今回は、『羆嵐』の元となった「三毛別羆事件」の真実や、小説で描かれたキャラクターと実在の人物との違い、そして物語の舞台となった北海道苫前(とままえ)町の現在について考察していきます。

日本史上最悪の獣害「三毛別羆事件」とは

小説『羆嵐』のベースとなっているのは、1915年(大正4年)12月に北海道苫前村(現在の苫前町)三毛別六線沢で発生した「三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)」です。

冬眠し損ねた「穴持たず」の恐怖

事件を起こしたのは、冬眠の時期を逃した「穴持たず」と呼ばれる巨大なヒグマでした。体長2.7m、体重340kgともいわれるこのオスグマは、数日間にわたり開拓民の集落を襲撃しました。

当時の記録によると、この事件によって胎児を含む7名の尊い命が奪われ、3名が重傷を負ったとされています。小説の中で描かれる、家屋を破壊して侵入してくるヒグマの描写や、なす術もなく混乱する人々の姿は、当時の証言や記録を丹念に取材した吉村昭氏による、事実に基づいた迫真の再現といえるでしょう。

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主人公・山岡銀四郎と実在した伝説のハンター

『羆嵐』を単なるパニック小説ではなく、深い人間ドラマにしているのが、ヒグマを仕留めるために現れる老練な猟師・山岡銀四郎の存在です。彼のキャラクターには、実在のモデルと小説ならではの脚色が入り混じっています。

嫌われ者の銀四郎と実在の山本兵吉

作中の銀四郎は、腕は確かですが酒癖が悪く、周囲から疎まれる「嫌われ者」として描かれています。ヒグマを仕留めた後、感謝の言葉で済ませようとする村人に対し、彼は「金を出せ」と激高します。

この改変について、一説には「他人に命がけのリスクを負わせておきながら、感謝の言葉だけで済まそうとする人間の狡さ」を浮き彫りにするための演出ではないかと考察されています。自己犠牲を払うヒーローが称賛されて去っていく美談とは異なり、代償を求める銀四郎の姿は、極限状態における人間のエゴを鋭く問いかけてきます。

一方、実在のモデルとされるのは「サバサキの兄」の異名をとった猟師、山本兵吉です。彼もまた酒好きではあったようですが、実際には面倒見が良く、孫の証言などからは優しい一面も伝えられています。彼はヒグマ退治の英雄として称えられましたが、小説のような孤独なアウトロー像とは少し異なる実像があったようです。

復讐を誓ったもう一人のハンター

また、この事件にはもう一人、重要な人物が関わっています。当時、区長の息子として事件を目の当たりにした大川春義さんです。彼は犠牲者の仇を討つためにハンターとなり、生涯で100頭以上のヒグマを仕留めたとされています。彼の生き様は、吉村昭氏の短編『銃を置く』などで描かれており、事件が遺した影響の大きさを物語っています。

物語の舞台・北海道苫前町を歩く

小説やドラマの舞台となった北海道苫前町には、現在も事件の記憶を伝える場所があります。現地を訪れることで、当時の開拓民たちが直面した自然の厳しさを肌で感じることができるでしょう。

臨場感あふれる「三毛別羆事件復元地」

事件現場に近い場所には、当時の情景を再現した「三毛別羆事件復元地」があります。うっそうとした森林に囲まれたこの場所には、襲撃された開拓小屋が復元され、巨大なヒグマの像が設置されています。その大きさや迫力は、物語の世界そのものだと感じる人も多いようです。

訪問時の注意点

この復元地を訪れる際には、いくつかの重要な注意点があります。

• 本物のヒグマに注意:皮肉なことですが、ここはヒグマの生息域そのものです。実際にヒグマが出没する可能性があるため、見学の際は音の出るもの(熊鈴など)を携帯するなど、十分な警戒が必要です。

• 通信環境と設備:山奥のため携帯電話の電波は届かないエリアとされています。また、現地にトイレなどの設備はないため、事前の準備が欠かせません。

• 開館期間:例年5月上旬から10月末までの期間のみ見学が可能とされています。冬季は閉鎖されるため、訪問時期には注意しましょう。

資料が充実した「苫前町郷土資料館」

もっと安全に、かつ詳しく事件について知りたい方には、市街地にある「苫前町郷土資料館」がおすすめです。

こちらでは、事件の詳しい解説パネルや、農林業の歴史資料が展示されています。また、かつて放送されたテレビドラマ版『羆嵐』(三國連太郎主演)の一部を視聴することもできると案内されています。

項目 内容
開館期間 5月1日~10月31日
入館料(町外個人) 高校生・一般 310円、小・中学生 100円(※情報は執筆時点のものです)

まとめ

『羆嵐』は、単なる過去の惨劇を描いた物語ではありません。そこには、圧倒的な自然の脅威と、それに翻弄される人間の弱さや逞しさが刻まれています。

実在のモデルとなった「三毛別羆事件」や、ハンターたちの生き様を知ることで、作品をより深く味わうことができるでしょう。

もし機会があれば、物語の舞台である苫前町を訪れてみてください。ただし、そこは今もなお野生動物たちの聖域でもあります。先人たちの苦闘に思いを馳せつつ、十分な安全対策をして見学することをおすすめします。

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